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文京区乳癌健診指定
ここまではマンモグラフィー検診の必要性を紹介してきましたが、ここからはマンモグラフィーの弱点についてお話しします。「マンモグラフィーに写らない乳がんがある」というショッキングな話です。
まず下のマンモグラフィーを見てください。年齢の異なる3人の写真です。一番上は30歳代の方、真ん中は40歳代後半の方、一番下は70歳代の方のマンモグラフィーです。年齢によって随分白い部分の大きさが違うのがお分かりになるでしょう。
マンモグラフィーで白く写るのは乳腺(乳房の中にある母乳を作る部分で、乳がんは乳腺に発生します)、黒っぽく写るのは脂肪です。乳腺は母乳を作る組織ですから子供を産み育てる年代では乳腺の量が多く、そのためマンモグラフィーでは白い部分が多くなります。
年齢とともに乳腺は不要になり脂肪に置き換わり、白い部分に黒いもの(脂肪はマンモグラフィーでは黒っぽく写ります)が混ざった写真になります。
この年代になると乳腺はごくわずかになり、大部分が黒い写真になります。
乳腺の大きさは個人差が大きく、30歳代でも脂肪の多い方もいますし、70歳になってもしっかりとした乳腺が残っている方もいらっしゃいます。
先ほど乳がんはマンモグラフィーで白く写ると述べましたが、小さな乳がんが見逃されやすいのはどの年代の方のマンモグラフィーでしょうか?
もうお分かりだと思いますが、乳腺の多い方の写真は全体が白く写るため、同じように白く写る乳がんは隠れてしまうことがあるのです。大きながんなら見逃すことは少ないと思いますが、小さながんは全く写らないということも実際に起こっています。これまでの調査報告によると乳がんの約20%はマンモグラフィーに写らないとされ、特に閉経前女性の小さな乳がんはマンモグラフィーには写りにくいとされています。これに対して、全体が黒っぽく写る高齢者のマンモグラフィーでは、白く写る乳がんは見逃されにくいといわれています。欧米女性の乳がんは閉経後の高齢者に多く発生しますのでマンモグラフィーが非常に有効ですが、日本人女性の乳がんは30歳代から増え始め、40歳代が最も多いという特徴があります。閉経前の乳がんが多い日本人女性にはマンモグラフィー検診だけでは不十分である可能性があります。
このマンモグラフィーは30代前半の方のものです。乳腺の量が多いため全体が白っぽいですが、左乳房(向かって右側)の上の方に小さな白い円形の腫瘤が写っています。これは、大きさ約8mmの乳がんでした。この方は幸いなことに乳腺の端っこの脂肪の多い部分に乳がんができたため、黒っぽい中に白い病変がよく目立ちます。もし、豊富な乳腺の中に乳がんができていたら、白っぽい中に小さな白い円形の病変ですから見つからなかったかもしれません。
ここまで、マンモグラフィ検診についてのよくある二つの誤解、「マンモグラフィーで異常なしと言われたら乳がんではないということ?」と「マンモグラフィーで要精密検査と言われたら乳がんが見つかったということ?」について説明しました。
市区町村のマンモグラフィー検診は、乳がんをできるだけたくさん見つけて乳がんで亡くなる方をできるだけ少なくする目的で行われるものですが、本来マンモグラフィーだけで全ての乳がんを見つけることはできません。ですから、異常なしと言われても次の検診までは自己触診は欠かさないようにしましょう。
また、できるだけ乳がんを見逃さないために「がんである可能性の低いわずかな異常」が見つかった方も要精密検査に入れています。むしろ「わずかな異常」で精密検査に呼ばれる方の方が多いのが現状です。そのため、大部分の方が精密検査で「がんはありません」と診断されます。要精密検査と言われても怖がらずに精密検査を受けに行きましょう。